フォーラム2005 in東京・IT活用による元気な学校づくり
パネルディスカッション(2)
「ITを活用した基礎基本の定着」
     
◆コーディネーター 堀田龍也先生 静岡大学助教授
◆パネラー 神戸和敏先生 小牧中学校教務主任
  森瀬晃子先生 小牧中学校教諭
  後藤真一氏 後藤教育研究所
  大西貞憲氏 NPO法人理事
◆中央中学校の実践発表から
「個別課題」に「みんな」で取り組むテスト返しの授業〜少人数指導でUプリントを活用する〜
 

Uプリントって何?

  • 数学のテストの後で一人ひとりに合った復習ができる個別プリント。
  • 問題内容はテストの類題。
  • テストの結果で問題が変わるので、一人ひとりの名前入り。
  • 一人ひとりに応じた復習プリント。
後藤 1年ほど前、小牧中学校を視察する機会があり、定期テストの後にUプリントを取り入れてみようということになりました。授業は少人数で展開し、テスト後に個別復習するという仕組です。

●授業の流れは、

  • テストを返します
  • Uプリントを配ります。

1枚できたら先生が○を付け、全部○になったら2枚目に進みます。まだならもう一度考え直す。 授業の後半になると、先生は個別指導をしたり○付けをします。2枚目ができた生徒は、友達に教えます。
問題は個別になります。ですから一人ひとりで勉強するイメージがなんとなくあるのですが、そうではなく、むしろ教え合う構造になっていきました。

●定期テストの後に毎回繰返して、年間5回実践をしました。先生方と話し合ったところ、

  • 個別だと意欲が違う
  • 教え合いは教師が仕掛けるもの
  • 日々の学習をどうつなぐかがこれからの課題

 時々見えるわかりたい・できるようになりたいという姿を手掛かりにして、日常の学習とつないでいくために、来年度以降も取り組まれようとしています。

◆パネルディスカッションから
堀田 Uプリントを開発する立場から1つの事例を紹介していただきました。たくさん○がもらえる子と点数が低い子とでは、例えば問題数が違ってきちゃうと思うんですがどうですか。
後藤 先生がUプリントを作られる時、2枚にすると指定したら、2枚に決めることができます。1枚2問ですから、理解の進んでいるお子さんもそうでないお子さんも4問です。
堀田 教え合いという形態が個別学習プリントをしていくうえでも、有効な学習形態だということですが、小学校ではよくやられている話ですが、中学校では結構難しいのですか?
後藤 3学年同時にやってみて、鈍かったのは高学年。後で伺いましたら、授業中は隣の子としゃべったらいけないということを言ってきているので、言っちゃいけないという意識が最初はあったんじゃないのかなということでした。教師の構えが生徒に伝わるように思います。
堀田 神戸先生、教え合いという授業形態は、中学校の授業形態として、なじみはどうですか。
神戸 うちの学校は、子どもたちのつぶやきだとかを拾い上げながらの授業展開を授業法の一つとして取り入れているので、かなり子どもたちはつぶやいたり教え合ったりするようになっていますね。教師の姿勢だと思います。
堀田 いろんな先生が教科担任で教えに来ますから、ある先生だけがそうしていても、子どもたちは学校全体で授業改善がされていないと、なかなかそうならない。Uプリントをどういう授業形態で使うかが実はとても有効性を発揮する大事なことだと思うわけです。
堀田 校務の情報化みたいなことと、学習の個別化、情報化が関係してきているような気がするのですが、神戸先生、一緒にやった方がいいのでしょうか。
神戸 子どもたちに係わるもの、学校に係わるもの全てを全職員で共有できるというのは、学校という組織では大きな力になると思います。情報を一元化しないと、次の段階に進まない。学校情報にしても、 校務情報にしても一元化されない限り、どう発展させようかという時にまたゼロからスタートしなければいけない。うちの学校では、とにかくデータは一元化して、何かアイディアが出た時に進められるよう、常に準備はしてあります。
堀田 大西さんは、教育コンサルタントとして、外側から学校に関わっていらっしゃいますが、基礎基本の定着や校務の情報化はあくまで手段であって、それによって学校は、これからどう変わっていくべきだとお考えでしょうか。
大西 そうですね。学校ってチームプレーを子どもに要求するんですが、先生はできない。 教科のことは人には言われたくない。見られたくない。 学校が力を持って、元気な学校ってどんな学校だろうと考えた時、結局一人ひとりががんばってみんなががんばっていればいいというよりは、お互いが同じような土俵で、みんなで活躍の場を持ち合うことだと思います。 自分のできることをやっていく。だけども、それをやったら、ばらばらになっちゃう。そこでこういった情報化が出てくると思います。 要は手段として、教師同士が自分のやっている事、人がやっている事をお互いが共有していく。 一元管理というのは、「これは自分のクラスの情報」と抱え込むことはできない。これをこわいと思うのか、楽になったと思うのか、難しいですよね。
もっと言うと、地域も見ているんです。学校というものを地域も先生もみんなで共有化して、力が出てくるんです。 ITとか基礎基本はもちろん大切ですが、それはあくまでも手段、それをベースにして学校全体が、また地域全体が子どもたちを育てていく、情報を共有化していく、誰が何をやっているか知っている、彼がこうしてくれるから私はこうしよう、これがいいチームワーク。 学校の中で情報が流れていく、意思の疎通ができていく。その時、大きな手段として、ITが活きるかなぁと思いました。