コラム&特集 バックナンバー
日本初の“地域立”小学校
「週刊 五反野小通信」(No.40)

これからも続く「地域立の学校」の実践


拡大協議会  研究発表会の翌週の2月5日、五反野小学校で「拡大協議会」が開催されました。1月29日の発表会が、全国からいらっしゃったお客さまに向けての発表会であるならば、2月5日の拡大協議会は、五反野小学校を支える地域の方、保護者の方に向けた発表会です。
 このような場を大切にするのも、「地域立」の学校ならではのことかと思います。この拡大協議会では、1月29日の発表会での、公開授業やパネルディスカッションの様子がビデオで紹介されるとともに、発表会当日同様に、理事会・開かれた学校づくり協議会・学校より、成果の発表が行われました。
 また、2月15日には発表会後初の理事会が開催され、翌年度の教育課程の編成等について審議が行われました。全校体制での教育活動の取り組みや地域と連携した授業のあり方、より発展的な英語活動、幼小連携などについて、非常に中味の濃い議論が行われていました。1月29日の発表会を通して、成果と課題を総括し、また多くの方から高い評価を受けたことで、五反野小学校の理事会は、さらにパワーアップしたように感じます。

連載のおわりに

校舎  学校・家庭・地域が一つになって、新しい学校をつくっていこうという五反野小学校の試みを40週にわたって紹介させていただきましたが、今号でいったん区切りとさせていただければと思います。
 文部科学省指定の実践研究の期間は、この3月で終わりますが、昨年11月に、新しい制度に基づき日本初の地域運営学校(コミュニティ・スクール)となった五反野小学校の挑戦は、これからも続いていきます。機会がありましたら、本ホームページ等で、五反野小学校のその後の活躍を紹介していきたいと思います。「連載のおわりに」に代えて、筆者が見た五反野小学校の魅力などをご紹介いたします。

五反野小学校の魅力
 五反野小学校の一番の魅力は、本当の意味で、地域が学校運営に参画していることです。授業の支援などで、学校づくりに地域の人が参加している試みや、学校教育と社会教育が融合した試みなど見受けますが、教育計画を含め、学校運営に地域が本格的に関わる事例として、五反野小学校の実践は特筆すべきものがあります。また、この実践が、学校や行政がお膳立てをして地域の方に活躍してもらうというものではなく、学校や行政とあるときは対立しながら、そのスタイルを確立していったことに非常に大きな意味があると思います。
 五反野小学校の理事会を傍聴していつも感じるのは、よい意味での緊張関係が存在することです。学校理事会制度の確立が終着点ではありません。この制度のもと、そしてこの緊張関係のもとに学校が運営されれば、教育に関する時代や地域のニーズがどう変わっても、いつも迅速に対応し、改革していける学校であり続けると思います。

五反野小学校に関する誤解
三原校長先生  五反野小学校の紹介記事や番組などを見たり、五反野小学校に関しての教育関係者の評価などを見るに、情報が正しく伝わっていないのではないかと思うことが二つあります。
 一つは、「民間出身の校長先生」ということが非常にクローズアップされて紹介されていることです。今年度赴任された三原徹校長先生は、筆者もよく存じており、経営センスと行動力、発想力に優れた大変優秀な方です。しかし、そのことよりも、学校が望む校長像を提示して、「自分たちの学校にはこんな校長がほしい」と三原氏をリクルートした学校理事会の行動力と、その考え方を十分知った上で赴任し、新しい学校制度のもとで力を発揮する校長先生の姿を評価すべきと思います。「民間出身」であるからうまくいくわけではなく、学校や地域に明確なビジョンがないところでは、またビジョンを生かす発想のない校長では、一人芝居に終わり、すべてを混沌とさせる危険さえあります。

 もう一つは、「学校の先生の姿が見えてこない」というコメントをおっしゃる方が多いことです。確かに、五反野小学校の実践は、学校理事会を核とした学校運営の改革にあり、他校の実践研究とは、趣を異にするかもしれません。また、学校理事会が提示した地域の方針を受けて学校が変わっていくわけですから、実践には当然タイムラグが発生します。また、両者の間には、緊張関係があって当然です。
 そのような状況の中、教職員間のチームワークよく、基礎基本の定着など、地域のニーズを生かしたカリキュラムを工夫し、また、授業診断などの地域の試みを前向きに受け入れ、双方のコミュニケーション手段としっかり位置づけて実践している教職員のみなさんにエールを送りたいと思います。

五反野小学校を支える人々
学校理事会  五反野小学校の新しい学校運営の制度も、その制度を支えているのは「人」です。すべては子どもたちのために献身的に活動する人たちが五反野小学校を支えています。特に大神田賢次理事長をはじめとする理事の方は、長い実践の間に、ややもすれば易きに流れやすいところを、「地域立の学校」であるという本質をいつも忘れずに、周囲にも自らにも、厳しい牽制球を投げ続けておられます。この牽制球が、地域立五反野小学校の実践を支える原動力であるといっても過言ではありません。

 また、表にはなかなか出ませんが、さまざまな「教育改革」を実践し続ける足立区教育委員会の取り組み姿勢と、調整役として実践をしっかりサポートする体制があったことは言うまでもありません。これは、教育委員会がお膳立てをすべて用意し、その上で地域の人に活躍してもらうという図式ではなかったからこそ、教育委員会の取り組みも、とても大変なものであったと思います。
 「地域立の学校」の名にふさわしく、本当にたくさんの地域の人々に支えられて、五反野小学校の実践はこれからも続いていきます。

 最後となりましたが、取材にご協力いただきました多くの関係者の方々に、この場を借りて御礼申し上げますとともに、これまでご愛読・ご支援いただきましたみなさまに深く感謝申し上げます。

(編集部 小西)


『週刊五反野小通信』バックナンバー(No.1〜No.40)

河村文部科学大臣来校、日本初の「地域立」小学校(2004/5/17)
No.1
土曜日は、地域の人がボクらの先生「のびのびスクール」(2004/5/24)
No.2
あいさついっぱいの五反野小、学校の前は「あいさつ通り」に(2004/5/31)
No.3
学校の前には3つの掲示板、地域の人に大人気!(2004/6/7)
No.4
1分ごとのチェックシートとビデオを活用した授業研究会(2004/6/14)
No.5
5月26日はネットデイ、先生方の手作り校内LAN(2004/6/21)
No.6
「一世帯一ボランティア」で、学校運営を応援するPTA(2004/6/28)
No.7
五反野小学校の学校理事会は、新しい学校運営に関する法律のモデルに(2004/7/5)
No.8
弾力的なカリキュラム編成を工夫した7講座の選択授業(2004/7/12)
No.9
学校公開と授業診断で、地域や保護者の方の評価をフィードバック(2004/7/19)
No.10
「ほめられるってうれしいですね」○つけ法で子どものやる気をアップ(2004/7/26)
No.11
金管バンドトレーナーによる「ふれあいコンサート」(2004/8/2)
No.12
環境にも配慮したアイディアいっぱいのスタンプラリー(2004/8/9)
No.13
TTと少人数を組み合わせた算数の授業、プロジェクターも有効活用(2004/8/16)
No.14
地域のパワーを取り入れた足立区の教育改革(2004/8/23)
No.15
おやじの会主催の夜の学校探検とキャンプファイヤー(2004/8/30)
No.16
基礎基本の徹底のための「パワーアップタイム」(2004/9/6)
No.17
コミュニティスクールがめざすもの〜学校理事会の取り組み(2004/9/13)
No.18
学校と地域が一体となった「あいさつ運動」の推進(2004/9/20)
No.19
すぐれた実践者を招いての学校理事会の勉強会(2004/9/27)
No.20
子どもたちの意欲を引き出す算数の選択学習(2004/10/4)
No.21
通知表をデジタル化「個人のカルテとよいところ見つけ」(2004/10/11)
No.22
授業診断の勉強会(2004/10/18)
No.23
全国初、新しい法律制度に基づいたコミュニティスクールが誕生(2004/10/25)
No.24
「あいさつ運動」への学校の取り組み(2004/11/1
No.25
フォーラム「コミュニティ・スクールの可能性を探る」(2004/11/8)
No.26
学社融合で進める秋津小学校の新しい学校づくり(2004/11/15)
No.27
五反野ハッピータイムで、英会話体験と国際理解(2004/11/22)
No.28
コミュニティによる京都のまちづくり・学校づくり「御所南小学校」(2004/11/29
No.29
コミュニティ・スクール・キックオフ・フォーラム、さまざまなスタイルと可能性(2004/12/6)
No.30
地域のゲストティーチャーと一緒に道徳授業地区公開講座(2004/12/13)
No.31
一対一の個別指導で学習を応援する「目の教室」(2004/12/20)
No.32
開かれた学校づくりと学校の安全対策(2004/12/27)
No.33
地域や保護者のニーズを生かした教育計画(2005/1/10)
No.34
全校体制での音読への取り組み(2005/1/17)
No.35
実践研究発表会・直前案内(2005/1/24)
No.36
座談会「3年間の実践研究を振り返って」(その1)(2005/1/31)
No.37
座談会「3年間の実践研究を振り返って」(その2)(2005/2/7)
No.38
座談会「3年間の実践研究を振り返って」(その3)(2005/2/14)
No.39
これからも続く「地域立の学校」の実践(2005/2/21)
No.40

●週刊五反野小通信
日本初の「地域立」小学校として、学校・家庭・地域が三位一体となって新しいタイプの学校づくりを進めている東京都足立区立五反野小学校にスポットをあて、そのさまざまな取り組みを週刊でお届けいたします。
◆足立区立五反野小学校◆
・文部科学省 「新しいタイプの学校運営の在り方に関する実践研究開発」指定校
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