「問題解決の授業」の日常化をめざして


相馬一彦(北海道教育大学教授)

1 筑波大学附属中学校15年での私の「研修」
@ 授業を「観る」「観てもらう」ことを通して
 ・授業の雰囲気作り
 ・教師自身の意欲的な取り組み
  まねることから学ぼう、クラスによって少しずつ変えてみよう、
  他の先生の授業を参観させてもらおう

A 学習指導案作成を欠かさずに
  「問題(A案、B案)」「目標」「主な発問」は必ず書いておく。
B 年に1回の発表と1本の論文を自らに課す

2 私の「問題解決の授業」
問題解決の授業
(問題の解決過程を重視する指導)
問題を提示することから授業を始め、問題の解決過程で新しい知識や技能、数学的な見方や考え方などを同時に身につけさせていく指導

T 問題を理解する
・提示された問題の意味を理解し、取り組もうとする。
U 予想する
・問題の結果や考え方について見当をつける。
V 課題をつかむ
・Uで出された「予想」を確かめる過程で、新たな課題に気づく。
W 課題を解決する
・解決する過程で、新たな知識・技能、見方や考え方を身につける。
X 問題を解決する
・解決した課題の結果を活用して、はじめの問題を解決する。

3 「問題解決の授業」への誤解
@ 時々行うだけの「特別な授業」ではない

A 「型に当てはめる授業」ではない
 右に5つの段階を示したが、必ずしもこの5段階にあてはめるものではない。
B 「特別な問題」である必要はない
 「問題」は、例えば日常生活と関連づけたり、ゲーム・パズル的なものにしなければならないという誤解がある。教科書や問題集によくあるような問題を少し工夫するだけでよい問題となる。
C 教科書を使わない授業ではない
D 教師が説明をしない授業ではない
 授業の方向性を決めるのは教師であり、指導性を発揮してこそ授業のねらいを達成することができる。目標や必要性を持たせた上で、必要に応じて、適切な場面で教師が説明を加えることも大事である。
E 練習や定着を軽視する授業ではない

数学の授業では、
◎特別ではなく「日常的に継続できること」を大事にしたい
◎知識・技能だけではない「確かな学力」を定着させたい

4 教師力を高める3つのポイント
@ 「予想」を意図的に取り入れて
「予想」の意義
・学習意欲を高める
・考え方を追究する
・思考の幅を広げる
「予想」と「仮説」「見通し」とは違うことに注目。
A 「問題」を工夫して
・決定問題、単純な問題
・数値、図の向きや大きさなど
(例)
縦が√2cm、横が√3cmの長方形の面積は・・・の問題の√3を√8にすると、よい課題がうまれてくる。

B 「比較」を大切にして
・授業で
 他のクラスと、過去の実践と。

・研究会で
 授業研究会の改善と工夫
 (例)
 授業研究会Tの中で出された意見を元にしてその授業を改善した上で、午後に他のクラスで同じ内容の授業を再度行うなど。
教師の力量が問われる時代に教師自身が自ら学び自ら考えることが大切